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新年あけましておめでとうございます。

新年あけましておめでとうございます。 旧年中は多くの皆さまにお世話になりました。服部弁護士弁護士など一同改めまして感謝申し上げます。 今年も昨年に引き続き、離婚・相続など家族法のエキスパート、商標・著作権・民事介入暴力など企業法務のエキスパート、交通事故や交通事故弁護のエキスパートを目指す事務所として、全力で勇気をもって物事に全力で取り組みます。当事務所も全力で離婚相談、相続相談など家族やこどもにこだわった弁護活動を展開していきたいと考えております。昨年は約100件の離婚等相談を担当させていただきました。また、旧年は大規模交通事故の道交法違反などの容疑者の弁護活動で、エアバックシステムなど科学的証拠の違法性なども主張する機会もありました。これまでの数多くの刑事弁護の実績を生かして、引き続き被疑者(容疑者)弁護、被告人弁護にも心を尽くしていきたいと考えております。特に俗論では、肯定的に働くものであっても、専門書などから専門的知見を突きつけることが重要であることを学びました。それが専門的学者による鑑定意見であっても最初からお手上げではなく、周辺事実から知識を身に着けたうえで、交通事犯についても尋問をすると成果があがることになります。また、担当案件のように、故意犯であろうと過失犯であろうと、望んで交通事故を起こすものはいないであろうが、新聞、テレビ、週刊誌を問わず、マスコミによる非難キャンペーンが繰り広げられて、私が担当した全く関係ない民事事件にも、そのことが書かれる名誉棄損など、ヒステリックな一切の弁明を許さない、産経新聞、毎日新聞の愚かな報道には、思うところがある。警察の発表そのままで、まさに「大本営発表」の反省がない。最近では、マスコミの報道ステーションなどの疑似音声を利用したいい加減な再現放映、警察の情報に基づくキャスター、評論家のコメントなど、罵詈雑言によるバッシングは、弁護人の弁護活動の逆境となることを改めて体現いたしました。そうした中で、どのような弁護戦略を立てていくかは、困難な作業ですが、弁護士としては、ほかにも探求すべき諸事情がある、と考えます。 まずは服部弁護士弁護士としては、強く思うことから始め、弁護士としての弁護活動についてもそうありたいと強く願う目標を掲げて臨んで参ります。 服部弁護士弁護士を始め、当事務所は、基本として正道を踏むことを大事にして、依頼者からみて正しい、自分にとって正しいということを重点に、利他の心を忘れず、女性やこどもにも優しい、人間として正しい道を歩む法律事務所、弁護士となるよう精進して参ります。弁護活動も正道を踏み、勇気をもって交渉・弁護にあたってまいります。また、渉外活動も努力して参ります。また、交通事故、物損事故、人身事故にも力を今後入れていきたいと思います。 本年は、新たな弁護士を迎えまして、服部弁護士弁護士も、事務所としてもその理念・・フィロソフィを基調に、名古屋の地域一番と呼ばれるよう、昨年以上に弁護士事務所を育てるため、心を尽くして参ります。 服部弁護士弁護士ほか一同、皆さまの温かいご指導のほど、よろしくお願い申し上げます。 2015年1月1日 名古屋駅ヒラソル法律事務所  所長 服部弁護士(弁護士) 参考判例等  弁護士出身の田原裁判官の反対意見をつけたいと思います。  裁判官田原睦夫の反対意見は,次のとおりである。  私は,多数意見と異なり,以下に述べるとおり,本件記録上,本件事故当時被告人が「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」に陥っていたものとは認められず,また,仮に本件事故当時被告人が「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」にあったとしても,被告人がその事実を認識していたことを認めるに足りる証拠は存しないというべきであって,被告人を刑法208条の2第1項の危険運転致死傷罪に問擬することはできず,被告人に対しては,刑法211条1項の業務上過失致死傷罪の責任を問うことができるに止まるものというべきであり,原判決を破棄し,本件控訴を棄却するのが相当であると思料する。  第1 本件事故当時,被告人が「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」にあったか否かについて  刑法208条の2第1項前段の「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」(以下「正常運転困難状態」という。)とは,多数意見が述べる「アルコールの影響により道路交通の状況等に応じた運転操作を行うことが困難な心身の状態をいうと解される」ことについては,私も異論はない。  問題は,被告人が本件事故当時正常運転困難状態にあったことを,如何なる事実によって認定するかという点である。一般的には,事故に至る迄の被告人の飲酒量,酩酊の程度を窺わせる言動の有無,事故に至る迄の運転状況,事故態様,事故後の被告人の態様や言動,飲酒検知の結果等の諸般の事情を総合して認定することになる。「正常運転困難状態」とは,客観的な事実状態であるから,原則として,被告人の事故に至る迄の運転状況,事故態様,事故前後における態様及び言動,飲酒検知の結果等,事故時の運転状況を推認し得るに足る諸事情から認定すべきであって,刑法208条の2の規定が制定された際に学者が警鐘を鳴らしているように,死傷の結果と飲酒検知の結果のみから,正常運転困難状態にあったと認定することは許されないのである。  1 本件事故当時,被告人が正常運転困難状態にあったか否かについての検討  本件記録から認められる本件事故時における被告人の運転状況に関わる諸事実について,以下項を分けて検討する。  (1) 被告人の本件事故前の飲酒量及び言動等  被告人が,本件事故に至る運転を開始する迄に,焼酎ロックを合計8~9杯(焼酎の量にして,480ないし540ml)のほかビール,ブランディーの水割り等相当量の飲酒をし,また,一定の酩酊状態にあったことを示す言動が存したことは認められるものの,他方,携帯電話を使ってメールのやりとりを通常の状態で行っていたというのである。そして,一審で取調べられたA教授の鑑定書の被験者のデータが示すように,飲酒による酔いの程度(血中アルコール濃度)は個人差が著しく,飲酒量のみからその酩酊度を直ちに推認することは出来ないのであり,また,被告人の言動も,一般に認められている酩酊度の分類からすれば精々で「微酔」に止まるものでしかない。  かかる諸事実は,被告人が本件事故時に正常運転困難状態にあったことを直ちに窺わせるものではない。  (2) 本件事故に至る迄の運転状況  被告人は,一審判決が認定するとおり,スナック「B」を出た後,海の中道大橋に至る雁の巣レクリューションセンター交差点(以下「本件交差点」という。)を左折する迄の約3.5kmの間,車道が狭く(狭いところは車道幅員約2.7m)住宅街の中を微妙に湾曲し,道路脇には電柱が設置されている箇所もあり,街灯はあっても薄暗い通りを,幅員1.79mの被告人車を運転して接触事故を起こすことなく約5~6分間走行し(運転開始時刻が午後10時40分頃で本件事故の発生が午後10時48分頃であり,本件交差点から本件事故現場迄約1.3kmで,その間被告人車は時速50kmから加速して100kmで走行していたというのであるから,本件交差点から本件事故現場に至る迄に要した時間は約2分程度と推認され,それからすると,被告人車がスナック「B」前を出発した後,本件交差点に至る迄に要した時間は約5~6分間程度となる。また,その走行時間からすると,その間の被告人車の速度は時速約35~42km程度となる。),また,その間,被告人車の同乗者Cが被告人の運転に危険を感じたことを窺わせる証拠も全く存しないのである。大谷裁判官は,被告人が同道路を通り慣れていることをもって,上記の運転状況を過大に評価すべきでないとされるが,正常運転困難状態とは,そのような道路を通行する際においてすら,道路交通の状況等に応じた運転操作をすることができない状況にあって初めて認められるべきものであって,大谷裁判官の意見には同調できない。  次に,被告人車が本件交差点を左折して本件事故現場に至る迄の間の走行状況を見ても,急加速こそしているものの,蛇行運転をしたり,車道から左右にずれるような運転を行っていた形跡も認められないのである。  かかる事実からは,少なくとも本件事故に至る直前までの被告人の運転状況は,「正常運転困難状態」にあったとは到底認められないのである。  (3) 被告人の本件事故後の言動  被告人は,本件事故後,事故現場から約300m先に被告人車を停車させてハザードランプをつけて降車し,同乗者のCに逃走を指示し,携帯電話で友人に身代わり犯人を依頼し,また,飲酒の事実を隠そうとして友人にペットボトル入りの水を持参するよう依頼している。上記事実からは,本件事故直後において,被告人が罪証湮滅のために事態に対応した相当の行動をしていることが認められる。  (4) 飲酒検知時の被告人の呼気アルコール濃度(血中アルコール濃度)及び同時点における被告人の言動  被告人に対しては,午後11時36分頃,呼気の飲酒検知が行われているが,その結果は呼気1l中のアルコール濃度0.25mgである(道路交通法施行令の定める換算値によれば血液1ml中0.5mg)。被告人が呼気検知の際に2度吹きをしていることから,検査データが若干低めに出ていることが窺われ,また,被告人は,飲酒検知に先立って約1lの水を飲んでいるところ,前記A鑑定における実験結果によれば,飲水によって呼気1l中のアルコール濃度が10~20%程度低くなることが認められるにすぎないから,それらの影響を最大限被告人に不利益に見積もっても,被告人が水を飲まない状態で飲酒検知を受けたとした場合には,アルコール濃度は呼気1l中0.25mgの20%高である0.3mg程度となる(血中アルコール濃度に換算すると血液1ml中0.6mg程度)。  血中アルコール濃度1ml中0.5mgという値は,平成13年に道路交通法施行令が改正される迄の酒気帯び運転の基準値であり,一般に広く用いられている4段階の酩酊度を示す数値の中では,最も低い「微酔」(血中アルコール濃度0.5~1.5mg/ml)あるいは「ほろ酔い初期」(血中アルコール濃度0.5~1.8mg/ml)の中でも最も低い数値に近い値であり,上記被告人に不利益に見積もった0.6mgという値は,それを若干上回る値にすぎない(なお,文献によれば,近年の欧米各国における飲酒運転とみなす基準は,血液1ml中で,アメリカ0.8mg,イギリス0.8mg,フランス0.8mg(0.5mg~0.8mgは違警罪),ドイツ0.5mg等となっている。)。  また,本件における飲酒検知時の「酒酔い・酒気帯び鑑識カード」によれば,被告人の見分状況は,言語・普通,歩行能力(約10mを歩行させる)・正常に歩行した,直立能力(約10秒間直立させる)・直立できた,酒臭・強い,顔色・青い,目の状態・充血,というのであり,また,同カードの被告人記載部分の文字は,アルコールの影響を窺わせるような乱れもなく読み易い字で記載されている。  以上によれば,本件における飲酒検知時点において,被告人は,酒臭,顔色,目の状態からして,身体に飲酒に伴うアルコールによる反応が生じていることは認められるものの,身体の運動機能に関しては異常は全く認められないのである。  (5) 小括  以上検討した諸点,殊に,本件事故直前迄の被告人の運転状況からは,道路交通の状況に応じた運転をしていたことが認められ,被告人の事故直前迄の運転状況が正常運転困難状態にあったことを窺わせる事実は全く認められないのである。また,飲酒検知の際の見分状況をみても,被告人の運動機能に異常は認められないのであって,これらの諸事実からすれば,本件事故当時,被告人が正常運転困難状態にあったと推認することは出来ないものと言わざるを得ないのである。  2 多数意見について  多数意見は,本件事故前の被告人の飲酒状況や言動等を踏まえたうえで,「本件事故後の飲酒検知結果等からは被告人の本件事故当時の血中アルコール濃度は血液1ml中0.5mgを上回る程度のものと認定できるにとどまること,また,被告人は,本件事故現場に至るまでは,約8分間にわたり道路状況等に応じた運転をしていたこと等を考慮しても,本件当時,被告人が相当程度の酩酊状態にあったことは明らかである」と認定し,そして,被告人が自車を時速約100kmで高速走行させていたにもかかわらず8秒程度にわたって被害車輌の存在を認識していなかった理由は,その間前方を見ていなかったか,前方を見ることがあっても被害車輌を認識することができない状態であったかの何れかということになり,「被告人は,いずれにしても,正常な状態にある運転者では通常考え難い異常な状態で自車を走行させていたというほかない。」とする。そして,「被告人が前記のとおり飲酒のため酩酊状態にあったことなどの本件証拠関係の下では,被告人は,飲酒酩酊により上記のような状態にあったと認定するのが相当である。」としたうえで,被告人は本件事故当時,正常運転困難状態にあったと認定する。  しかし,多数意見の上記認定には,以下のような問題点があり,到底与することはできない。  (1) 酩酊の程度について  多数意見は,被告人は本件事故当時,「相当程度の酩酊状態にあった」と認定するが,「相当程度」とは具体的にどの程度の酩酊度を想定しているのかが明らかではない。被告人は,本件運転開始前に,前記のとおり相当量の飲酒はしているものの,前記のA鑑定から明らかなように,飲酒による酩酊度(血中アルコール濃度の上昇)は個人差が著しいのであって,被告人は本件事故前の飲酒量にかかわらず,前記のとおり本件事故の直前まで,道路交通の状況等に応じた運転操作を行っており,また,事故後の飲酒検知の際の血中アルコール濃度は,その直前に水を相当量飲んでいることを考慮しても,1ml中0.5mgを若干超える程度であって,一般に酩酊度の基準として認められている4段階の酩酊度のうちの最も低い「微酔」あるいは「ほろ酔い初期」のレベルを示しているにすぎず,また,飲酒検知時の被告人の運動機能は正常に保たれているのである。多数意見は,それら客観的なデータが存することを認めながら,そのうえで,「相当程度酩酊していた」として,その後の前方不注視による本件事故がアルコールの影響により生じたものと認定するが,本罪が酒酔いの程度それ自体からして,自動車を運転することが客観的に危険な行為であると認められる状態であることに着目して処罰するものであることからすれば,客観的な検査データや外部から認識される運転者の運動能力(運動機能)を離れて,酩酊のもたらす危険性を示す指標として「相当程度の酩酊」という極めて曖昧な概念を用いることは,厳格に律せられるべき構成要件を極めて緩やかに解するものであると言わざるを得ず,刑法の解釈として容認できないものと言わざるを得ない。  (2) 酩酊と前方不注視について  被告人は,本件交差点左折後に加速して時速100km程度で走行しているが,本件交差点左折後本件事故に至る迄追越した車輌が一台も存しなかったことが示すように,本件交差点を左折後海の中道大橋に至る迄の道路の交通状況は極めて空いており,同道路がほぼ直線であって,また深夜であったことからすれば,制限速度50kmであるにもかかわらず時速100kmの速度で走行したことは,若干加速し過ぎとは言えても極めて異常な速度とまでは言えない速度である。  また,約8秒間前方を不注視した結果,本件事故に至っているが,その間,脇見運転を継続していたとすれば,8秒間というのは若干長きにすぎると言えるが有り得ない時間ではない。また,その間,前方を見ることがあっても被害車輌を見落とした可能性があるとの点は,日常多数発生している追突事故の殆どが脇見運転又は「考え事をしていた」等の前方不注視によるものであることは顕著な事実であるが,そのうち,「考え事をしていた」というのは,前方を見ているにもかかわらず,直前を走行する自動車の動静に十分に意を払っていなかったことを示すものであり,全く酒気を帯びていない場合においても,日常的に生起して追突事故の原因となっているのである。それ故,仮に被告人が上記8秒の間に前方を見たことがあったにもかかわらず被害車輌に気付かなかったとしても,これからナンパをしに行くという昂揚した気分の下で(即ち,「考え事をしていた」という追突事故と同様の状態),つい前方を走行している自動車の動静を見落とすこともあり得るところであって,約8秒間,被害車輌に気付かなかったとの事実から,多数意見が述べるように,それは酩酊の影響により気付かなかったものであるということが,経験則上当然に推認されるとは到底言い得ないのであり,かかる事実関係から被告人が本件事故時に正常運転困難状態にあったとの事実を認定することはできないのである。  なお,原判決は,本件事故に至る迄,被告人は,基本的には,前方に視線を向けていたが,アルコールの影響により,正常な状態であれば当然に認識できるはずの被害車輌を認識できなかったとする。そして,その認定に当たり主として依拠した証拠は,多数意見の指摘する,①本件道路には横断勾配が付されているため,ハンドルを操作せずに車輌を走行させると自然に左に向かう構造となっており,長時間の脇見をしながら直進走行することは不可能であるとの実験結果が記載された報告書,②アルコールが運動機能に影響を与えなくても,アルコール血中濃度1ml中0.5mg程度から視覚に影響を与え,非常に危険であるとするD医師の証言である。  しかし,前者の実験は,多数意見が指摘するとおり通常では考え難い運転方法を採っているのに加えて,時速50kmで行った実験結果を時速100kmで走行していた本件にそのまま当てはめるという物理学の基本を無視した認定を行っているのであって,到底採用することができない証拠であることは明らかである。また,後者の証拠も,アルコールの視覚に対する影響の有無,程度は,安全運転規制の上で最も基本的な項目であるにもかかわらず,アルコールが運動機能に影響を与える状態に至っていなくても視覚機能に影響を与えるとの結論を述べるものは,原判決の依拠するD証言以外に文献等も証拠として提出されていないのであり,また真にD証言どおり,アルコールの視覚機能への影響が運動機能への影響に先立って顕われ,かつその影響が大きいとすれば,当然に,これ迄の間に飲酒検知に当たってはその点を重視した検査項目が追加され,またその視点からの規制が強化されていてしかるべきであるにもかかわらず,そのような事実は全く認められないのであって,その点からしてもD証言をそのまま採用することは相当でないというべきである。  3 まとめ  以上検討したとおり,被告人の本件事故現場に至る迄の運転状況は,道路交通の状況等に応じて運転していたものというべきであって,正常運転困難状態にあったとは認められないこと,また,事故後の被告人の言動,アルコール検知の結果からしても,本件事故時に被告人が正常運転困難状態にあったことを推認できるに足る事実は,本件証拠上認められないのである。  それにもかかわらず,約8秒間の前方不注視(脇見または前方の動静に気付かなかった)との一事をもって,それがアルコールの影響によると認定するのは,その認定自体,経験則違反であり,殊に犯罪事実の構成要件該当性という極めて厳格に認定されるべき場面における経験則の適用として首肯し難いばかりでなく,かかる運転状況をもって,正常運転困難状態にあったと認定することは,正常運転困難状態とは,「事故を起こしたときにフラフラの状況であって,とてもこれは正常な運転のできる状態ではないという場合に限定していかないと,酒酔い運転プラス事故イコール本罪ということになると,本来意図していたところよりも広い範囲を捕捉することになって危険である」と刑法208条の2の立法時に学者が警鐘を鳴らしていたのと正に同様の状態を招来するものであり,同条の適用範囲を立法時に想定されていた範囲よりも拡張して適用するものであって,同条の解釈としても適切ではないというべきである。  第2 被告人の認識について  刑法208条の2第1項の危険運転致死傷罪は,アルコールの影響により正常運転困難状態にあることにつき被告人が認識を有していることが必要とされるところ,以下に述べるとおり,被告人が,正常運転困難状態にあるとの認識の下で,本件事故時に被告人車を運転していたとは到底認められないのである。  先ず,本件事故直前迄の被告人の運転操作は,第1,1,(2)で述べたとおり,道路交通の状況に従って運転しており,その運転状況自体,正常運転困難状態にはなかったものというべきであるから,被告人が正常運転困難状態に陥っていたと認識することは有り得ないといえる。  次に,本件事故に至る迄の約8秒間の脇見(あるいは前方を見ながら前方通行車輌の動静の注視の懈怠)についても,その間に被告人がそのような脇見運転(あるいは前方通行車輌の動静への注視の懈怠)自体がアルコールの影響によるものであることを認識していたことを窺わせる証拠は存しない(同乗者のCが被告人に対して,「いつもこんなに飛ばすんですか」と聞いた事実が認められるが,かかる会話の存在をもって,被告人が正常運転困難状態で運転していたことを認識していたとすることは困難である。)。  そうである以上,多数意見のように「本件事故前の飲酒量や本件前後の被告人の言動等によれば,被告人は自身が飲酒酩酊により上記のような状態(飲酒酩酊により前方を見ていなかったか,前方を見ることがあっても被害車両を認識することができない状態)にあったことを認識していたことも推認できるというべきである」とは到底認定できないのである。多数意見は,本件事故の結果は,過失(刑法211条1項)によっても生じ得る事態であるにもかかわらず,その結果の重大性に引きずられて,被告人がアルコールの影響による運転困難状態にあったことを認識していたことを推認するものと言わざるを得ず,到底与することができない。  第3 結論  以上述べたとおり,本件における被告人の運転状況は,本件における全証拠を検討しても,アルコールの影響により正常な運転が困難な状態の下で運転していたものとは到底認められず,また被告人がアルコールの影響により正常な運転が困難な状態であることを認識して運転していたものとも認められないのであって,被告人を本件事故に関し,刑法208条の2第1項の危険運転致死傷罪に問うことは出来ず,刑法211条1項の業務上過失致死傷罪の責任を問い得るに止まるべきものであるから,原判決を破棄し,本件控訴を棄却するのが相当である。 (裁判長裁判官 寺田逸郎 裁判官 那須弘平 裁判官 田原睦夫 裁判官 岡部喜代子 裁判官 大谷剛彦)