DV

夫の暴力から逃げると妻と子の別居先住所を夫が調べられます。

夫の暴力から妻が子を連れて別居するも、妻と子の別居先住所を夫が調べて毎日生活圏で待ち伏せされつきまとわれる場合、夫の行動をやめさせられるのか。

 保護命令の一つである接近禁止命令を得ることにより、加害者である夫からの、被害者である妻に対するつきまとい行為を禁止することができます。

 保護命令の種類

 保護命令は、配偶者(元配偶者・事実婚を含む。以下、「加害者」)の暴力から被害者の生命・身体を守るため、裁判所が被害者の申立てにより、一定期間、加害者を被害者から引き離すために発する命令のことであり、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(DV防止法)の重要な柱のひとつです。保護命令に違反した場合には刑罰が課されます。

 裁判所が出す保護命令は、①被害者への接近禁止命令②退去命令③電話等禁止命令④子への接近禁止命令⑤親族等への接近禁止命令の5種類です。なお、③④⑤は、①の被害者への接近禁止命令の実効性を確保するための付随的な申立であることから、単独で発令されることはなく、①の被害者への接近禁止命令が発令されていることが前提となります。

被害者への接近禁止命令

 被害者の身辺への「つきまとい」や被害者の住居、勤務先のほか通常所在する場所付近での「はいかい(徘徊)」を禁止する裁判所の命令です。有効期間は6カ月間で、再度の申立ても可能です。

退去命令

 同居している住居からの退去及びその住居の付近での「はいかい」を禁止する命令です。有効期間は2カ月間で、やむを得ない場合には、再度の申立ても可能です。

電話等禁止命令

 加害者が被害者に対して以下の行為をすることを禁止する命令です。接近禁止令と異なり、被害者の子や親族等は対象になりません。また、電話等禁止命令は付随的な申立のため、有効期間は被害者への接近禁止命令の有効期間が満了するまでの間です。

・面会の要求行動

・監視しているような言動等

・著しく粗野または乱暴な言動無言電話

・連続しての電話

・FAX、電子メール(緊急時を除く)夜間(午後10時から午前6時)の電話、FAX、電子メール(緊急時を除く)著しく不快な物の送付名誉を害する事項の告知等性的羞恥心を害する事項の告知

・物の送付等

子への接近禁止命令

 加害者が被害者の同居する未成年者の子を連れ戻すと疑うに足りる言動を行っている場合、未成年者の子に対しても接近禁止命令の発令ができます。加害者が被害者の子を連れ去った場合、被害者が子を取り戻すために加害者と会うことを余儀なくされ、配偶者から更なる暴力を加えられる危険性があるため認められた制度です。なお、対象となる未成年者の子が15歳以上の場合は、書面による子の同意が必要です。

親族等への接近禁止命令

 加害者が被害者の親族や密接な関係を有する者の住宅に押しかけて著しく粗野または乱暴な言動を行っている場合、被害者の親族等についても接近禁止命令の発令ができます。被害者が加害者の行動をやめさせるために加害者と会うことを余儀なくされ、更なる暴力を加えられる危険性があるため認められた制度です。なお、対象となる親族等の書面による同意が必要です。

保護命令の要件

 保護命令が認められるためには、以下の要件を満たすことが必要です。

加害者から身体に対する暴力又は生命に対する脅迫を受けたこと

 保護命令を申し立てることができるのは、加害者(配偶者・元配偶者(事実婚を含む))から身体に対する暴力又は生命に対する脅迫を受けた者です。DV防止法における配偶者からの「暴力」の定義には、身体に対する暴力だけでなく、これに準ずる「心身に有害な影響を及ぼす言動」も含まれますが、上記の要件にあたらない暴力は保護命令の対象にはなりません。また、暴力等を受けた後に夫婦関係を解消した場合は、以前に受けた暴力等をもとに保護命令を申し立てることができますが、夫婦関係を解消した後に受けた暴力をもとに申し立てることはできません。

 平成25年の法改正により、生活の本拠を共にする交際をしている者から暴力を受けた被害者(いわゆる同棲中の恋人から暴力を受けた者)についても、保護命令の規定が準用されることになりました。

加害者からの更なる身体に対する暴力により、その生命又は身体に重大な危害を受ける恐れが大きいこと

 冒頭事案のように、これまで暴力をふるってきた夫が妻の別居先の住居をつきとめてしつこくつきまとっている場合、妻が再び暴力をふるわれるおそれは大きく、「生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きい」といえます。

 保護命令の申立て

管轄

・相手方(加害者)の住所の所在地を管轄する地方裁判所

・申立人の住所又は居所を管轄する地方裁判所

・暴力が行われた血を管轄する地方裁判所

以上のいずれにも申立てができます。

ただし、居所の立証の問題や避難先が加害者に知れる危険性を考慮する必要があります。

申立書面

 

 

 保護命令の申立ては、書面によることが必要です。申立書の書式は、各地方裁判所のホームページからダウンロードできます。

 申立書その他の記録は、相手方が閲覧・謄写(コピー)できまるので、申立人が避難先等を秘匿している場合には、従前の住所等と申立人の住所として記載するなどの注意が必要です。

 申立書面には、イ)身体に暴力を受けた状況、ロ)さらなる暴力により生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きい事情、ハ)子への接近禁止命令を得たい場合は配偶者が幼年の子を連れ戻すと疑うに足りる言動を行っていることその他の事情、ニ)親族等への接近禁止命令を得たい場合は配偶者が親族等の住居に押しかけて粗野又は乱暴な行動と行っていることその他の事情、ホ)は言う鵜者暴力相談支援センターや警察に保護を求めていた場合は、その旨及び所定の事項を記載します。

 なお、配偶者暴力相談支援センターや警察に保護を求めていない場合は、公証人面前宣誓供述書が必要ですが、あまり利用されていないようです。

 前記のイからホの事情については、暴力や脅迫を受けた際の状況、つきまといの状況、その際の夫の態度や言葉などを、できるだけ具体的に詳しく記載します。直近に暴力をふるわれていなかった場合でも、その理由(妻が、暴力をふるわれた時の恐怖心から、夫に逆らうことができず、夫の顔色をうかがいながら暮らしたため暴力を受けずにすんだこと等)によっては、保護命令を得ることは可能です。

提出資料

 申立の際には、申立の事情を裏付ける資料を用意します。某慮kうによりケガをした場合、その診断書または写真があれば、暴力をふるわれたことの有力な証拠となります。暴力の直接の証拠がない場合でも、PTSDを発症した場合の診断書や暴力を受けた際の状況を詳述した陳述書によって、保護命令が認められた例もあります。

審尋(審問)の開始

 申立てが受理されると、「速やかに」審尋が行われます。

 なお、管轄裁判所によっては、申立当日に申立人の審尋を行う裁判所もありますので、念の為事前に申立予定を連絡し、期日の調整等をしておくとスムーズな場合があります。

その後、相手方に申立書や書証の写し等を送付し、1週間から10日程度の内に相手方の審尋を行う運用がなされているようです。申立人代理人は、相手方の審尋期日に同席することも可能ですが、事案によっては安全に十分配慮する必要があります。

 また、裁判所は、申立人が保護を求めた配偶者暴力相談支援センター又は警察に対し、所定の書面の提出を求め、必要があればさらにその内容について説明を求めます。

保護命令の言い渡し

 保護命令は、相手方が審尋期日に出頭した場合にはその場で言い渡され、効力が生じます。相手方が審尋期日に出頭しない場合には、決定書が相手方に送達されることによって効力が生じます。

 保護命令発令後の警察との連携

 裁判所から保護命令が発せられると、裁判所が、その旨・その内容を、申立人の住所又は居所を管轄する警視総監又は道府県警察本部長(警察)に通知します。したがって、申立書に従前の住所等を記載した場合には、裁判所には実際の住所又は居所を伝えておく必要があります。

 また、申立書に支援センターに事前に相談した事実呉記載がある場合は、当該支援センターにも保護命令が発令された事実と内容を通知します。

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