宝くじについて、特有財産なのか、寄与度は2分の1か問題とされた事例

「宝くじ」のついて寄与度が、購入者である夫6、妻4にされた事例

 

第1 事案の概要

 1 本件は、YXに対して財産分与審判を求め、Xが起こした即時抗告事件である。婚姻中に「宝くじ」で2億1000万円をYが取得しているので、特有財産性等が争われていました。

   Yは2万円のこづかいをもらい、毎月2000円の宝くじの購入をしていたが、平成18年4月、宝くじの当選により約2億1000万円を得た。ポイントになるのは、Yは当選金で住宅ローンを返済し、勤務による給与は婚姻費用にあて、自らの小遣いは当選金から充てるようになった。

 2 ポイントとして、平成20年、仕事を辞め、当選金の資金運用から30万円ていどの生活費を交付していた。その後資産運用がうまくいかなくなったことからYは再就職し、収入と当選金をXに渡した。

   Xの資産は100万円、Yの資産は9000万円である。Yの資産は、預貯金と保険関係として、約7200万円あり、その原資は宝くじの当選金である。Y名義の不動産の評価は700万円である。

3 前橋家裁高崎支部は、夫婦名義財産の8割が当選金であり、これをとらえればその3割が夫婦共同財産であるから、Xは1.5割を取得するというものであった。このような意味で、原審は特有財産性を広く認めて夫であるYに有利な審判を出したといえる。具体的に住宅ローンの返済財産も7割が特有財産とみている。

第2 東京高裁平成29年3月2日決定

 1 東京高裁決定は、当選金は夫婦の共有資産と指摘し、特有財産として認めるアプローチではなく、寄与度で考慮するアプローチをとることになった。このアプローチの違いで、妻であるXの取り分が主文では1000万円から1742万円に増加している。ただし、本件は評価に争いが生じやすい不動産を分与しており、各裁判体により判断は分かれやすいと思われる。

 2 「原審申立人と原審相手方は平成5年■■月に婚姻したこと(前提事実(1)),婚姻時に原審相手方は,資産として貯金約5万円を有していたが(乙22),医院に看護師として勤務し,月額約30万円の給料の支給を受け(乙18),また副業として整体業を営み,月額約5万円の収入を得ていたこと,原審相手方は,毎月,給料約30万円と副業の収入のうち2万円程度を原審申立人に交付し,これにより家族の家計を賄ったこと,原審申立人は,平成15年頃まで専業主婦であり,その頃ヘルパー2級(訪問介護員養成研修2級)の資格を取得したこと,原審相手方は,上記副業の収入のうち2ないし3万円程度を小遣いとして費消し,毎月2000円程度,C等の宝くじなどの購入に充て,本件当選金を得たCの購入資金もこれから拠出したこと,原審相手方は,婚姻後に購入し,家族が居住する土地(本件土地)と新築した自宅(本件建物)の住宅ローン約2000万円を負っていたが,Cの当選後,本件当選金を原資として住宅ローンを完済したこと(前提事実(2)ウ,(3)ウ,乙23),原審相手方は,Cの当選後も医院に看護師として勤務し,月額約32万円の給与等の支給を受け(手取りは約27万円,乙19),これをすべて原審申立人に交付して家族の家計を賄い,本件当選金を原資として自分の小遣い分を支出したこと,その後,原審相手方は,平成20年頃,病院を退職し,本件当選金の運用を図るため,トレーダーとして資産運用に専念することになったものの,資産運用による利益が生じなかったため,原審申立人には本件当選金を原資として毎月30万円と年2回50万円を交付し,これにより家族の家計を賄ったこと,原審相手方は,再度病院に勤務するなどしたが,毎月の給料約25万円と本件当選金を原資として毎月5万円を原審申立人に交付し,これにより家族の家計を賄ったこと等が認められる。
 これらの事実によれば,本件当選金を得たCの購入資金は,原審申立人と原審相手方の婚姻後に得られた収入の一部である小遣いから拠出されたこと,本件当選金の使途も,同人ら家族が自宅として使用していた本件土地建物の借入金約2000万円の返済に充て,原審相手方が勤務先を退職してからは,毎月,本件当選金を原資として生活費相当分を拠出したこと等が認められる。そうすると,Cの購入資金は夫婦の協力によって得られた収入の一部から拠出され,本件当選金も家族の住居費や生活費に充てられたのだから,本件当選金を原資とする資産は,夫婦の共有財産と認めるのが相当である。

   そして、寄与度については、「原審相手方名義の預貯金,保険,不動産,前渡金等,対象財産のほぼ全部について,本件当選金が原資となっているところ(前提事実(2)イ,ウ,(3)ウ),上記認定のとおり,本件当選金の購入資金は夫婦の協力によって得られた収入の一部から拠出されたものであるけれども,原審相手方が自分で,その小遣いの一部を充てて宝くじ等の購入を続け,これにより,偶々とはいえ当選して,本件当選金を取得し,これを原資として上記対象財産が形成されたと認められる(上記(1))。これらの事情に鑑みれば,対象財産の資産形成については,原審申立人より原審相手方の寄与が大きかったというべきであり,分与割合については,原審申立人4,原審相手方6の割合とするのが相当である。」と説示し、抗告審の決定は、Xは夫婦共有財産の4割を取得するというものである。

第3 財産分与は「特有財産」なのか、「寄与度」なのか

 1 本件と類似する事例として、競馬の利益で購入したマンションの売却益について、3分の1を妻に分与したものがある。(奈良家裁平成13年7月24日)

   この裁判例では、万馬券は射幸性の高い財産であり、夫の才能によるものとはいえず、運によるところが大きい臨時収入であるので、特有財産とはされず、夫婦共同財産としたうえで売却代金の3分の1の寄与度、つまり、67:33の割合での分与だったことになる。

 2 このようにみてくると、まず特有財産といえるかは、原資が何か、夫の才覚だけか、射幸性が高いといえるか、運によるところが大きいかが一応の基準とされているようにも思われる。

本件についてみると、原資が夫婦共同財産から出ていたことに照らすと、原則としては夫婦共同財産になりやすいものの、宝くじが夫の才覚によるものであるのか、また、射幸性が高いといえるのか、宝くじの公共性などで原審との判断が分かれ、原審は夫婦共同財産について特段の根拠を示さず6割部分は夫の特有財産とすべきという認定となっている。

これに対して、抗告審としては、要旨、トレーダーとして生活してもその実績はなく、結局、退職後の金員についても当選金から賄われていることに照らすと、家族の家計はその間も当選金から支払われていたのである。

こうした点を強調して、結局、当選金の使いみちが生活費等に充てられていたことなどから特有財産としての識別性を失ったとの判断があるものとみられる。もっとも、寄与度については、夫は宝くじを自分のわずかな小遣いから購入する義務もないことに照らし、4:6と定めた。

   結論的に、寄与度で調整したものの、こうした案件では、どの程度の財産分与をするのが妥当かという観点から「据わり」の良い判断から理由は後付けということもあるのであって、前橋家裁高崎支部平成28年9月23日の特有財産と一部認めるというアプローチもかなり注目される。しかし、原審は理論的な説明に乏しいことから、この点、結論を維持できなかったように評釈される。

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