生活費

夫の行方不明の場合、退職金は受け取れるか

退職金の受け取り

Q 夫が駆け落ちしてしまい、連絡がつきません。会社も無断欠勤しているようで、夫の勤めている会社は就業規則に従って解雇し、退職金の一部を支払うといっています。夫の代理人として、私が退職金を受け取って、生活費や夫名義のローンの支払いに充当してもいいのでしょうか。

 A 相談者が代理人として退職金を受け取ることは、賃金直接払いの原則(労基法24)に違反しますのでできません。最終的には、会社の判断になると思いますが、行方不明で失踪宣告など相続が開始する事由があれば良いのですが、会社側の弁護士としても本人がひょっこりあらわれるリスクを警戒します。もっとも、こうしたケースでは退職金が多額に上ることも少ないと思われますので、婚姻費用分担請求を速やかに行うなどの、対策を講じるのが良いように思われます。

 しかし、裁判所に夫の「不在者財産管理人」を選任してもらえば、財産管理人が退職金を受領し、相談者が財産管理人に生活費の支払いを求めることが可能です。まずは、離婚弁護士にご相談ください。

 

1 賃金直接払いの原則(労基法241項)

 相談者は夫婦間の扶養義務に基づき、夫に生活費の支払を求めたいところです。しかし、夫は駆け落ちで連絡がつかず請求できません。そこで、夫が受け取るはずの退職金を代わりに受け取り生活費に充てることができないのでしょうか。生活が困窮している場合など事実上経営者の判断でもらえる場合もあるかもしれませんが、社長の権限が強い零細企業以外では就業規則上難しいケースが多いでしょう。

この点、給料や退職金・諸手当といった賃金は、労働者本人しか受け取ることができないとされています(労基法241項「賃金直接払いの原則」)。夫婦は日常の家事に関する法律行為については相互に代理権を有していますが(民法761条)、それでも労働者の配偶者が代理人として賃金を受け取ることはできないのです。したがって、今回の相談者も会社から夫の退職金を受け取ることはできないと考えられます。例えば、こどもの賃金も親が代理して受け取ることはできません。

 もっとも、夫名義の口座の管理は上記代理権によって可能です。そのため通帳・印鑑等を相談者が管理している場合、いったん夫名義の口座に振り込まれた退職金を引き出すことは可能です。このため、退職金を振り込んでもらい必要かつ相当な範囲内における婚姻費用の支出であれば、問題は日常家事代理権である民法761条の代理の範疇に入るのではないかと思われます。

2 不在者財産管理人の選任

 

相談者は夫と連絡がつかないということなので、不在者財産管理人の申立てを裁判所に申し立て、管財人を選任してもらい、管財人が退職金を受け取ることが考えられます。選任がされれば、相談者は退職金を受け取った管財人に対して相当額の生活費の支払いを求めることができます。まずは、離婚弁護士にご相談ください。

お金に関するお悩み