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内縁の妻でも労災の遺族補償年金を受け取れる?名古屋の離婚弁護士の解説

 

内縁の妻でも労災の遺族補償年金を受け取れる?パターン別に解説

 夫が労災事故で死亡したら、残された妻は労災保険から「遺族補償給付」というお金を受け取れます。遺族補償給付では「年金」が支給されるケースと「一時金」が支給されるケースがあります。例えば、離婚ではなく内縁の夫婦の場合は、遺族補償年金は受け取れるのでしょうか。

 

婚姻届を提出していない「内縁の妻」であっても「遺族」として労災保険の遺族補償給付を受けられるのでしょうか?

 

今回は夫に「戸籍上の妻」がいない場合といる場合の2パターンに分けて、内縁の妻が遺族補償給付を受けられるかどうかを解説します。

夫と婚姻届を提出せず内縁関係を継続している方は、ぜひ参考にしてみてください。

 

1.労災保険の遺族補償給付とは

夫が死亡したときに妻が受け取れる「遺族補償給付」とはどういった制度なのか、ご説明します。

 

1-1.労災保険とは

遺族補償給付は、労災保険から支給される給付金の1種です。

労災保険とは、労働者が労災によってけがをしたり障害が残ったり死亡したりしたときに備えて加入しておく保険です。法律によって強制的に加入しなければならないため、どこかの会社や事業所で雇われている方は、必ず労災保険へ加入しています。

夫が会社員であれば、必ず労災保険に入っているものと考えてください。

 

1-2.遺族補償給付とは

労災保険には「遺族補償給付」という給付金制度が用意されています。これは労働者が労働災害(労災)によって死亡したとき、残された遺族の生活を維持するための給付金です。

以下の2種類があります。

1-3.遺族補償年金

遺族補償年金は、残された遺族に「年金方式」で支給される給付金です。労働者の死亡後、毎年継続的に受給できます。

受給金額は遺族の人数によって異なります。

  • 遺族が1基礎日額の153日分
  • 遺族が2基礎日額の201日分
  • 遺族が3基礎日額の245日分

 

さらに、上記とは別に「遺族特別支給金」として一律で300万円を受け取れます。

 

1-4.遺族補償一時金

遺族補償一時金は、遺族補償年金を受け取れる遺族がいない場合に支給される給付金です。年金とは異なり一時払いとなり、基礎日額の1,000日分が一括で支払われます。

300万円の遺族特別給付金については、これとは別に支給されます。

 

2.遺族補償給付を受け取れる人

遺族補償給付を受け取れる「遺族」の範囲は、法令によって定められています。優先順位があり、受給権が認められるのは先順位の権利者となります。

 

以下で遺族補償給付を受け取れる人を、先順位者から順番に載せるので確認しましょう。

  • 妻または60歳以上または一定の障害を持つ夫
  • 18歳になって最初の331日までの子ども、一定の障害を持つ子ども
  • 60歳以上または一定の障害を持つ父母
  • 18歳になって最初の331日までの孫または一定の障害を持つ孫
  • 60歳以上または一定の障害を持つ祖父母
  • 18歳になって最初の331日までの兄弟姉妹または60歳以上の兄弟姉妹、あるいは一定の障害を持つ兄弟姉妹
  • 55歳以上60歳未満の夫
  • 55歳以上60歳未満の父母
  • 55歳以上60歳未満の祖父母
  • 55歳以上60歳未満の兄弟姉妹

 

遺族補償年金を受け取れるのは「労働者によって生計を維持されていた遺族」に限られます。自分でも収入があり扶養されていなかった遺族には、年金ではなく一時金が支給されます。

 

3.内縁の妻も遺族補償給付を受けられる

「妻」はもっとも優先的に遺族補償給付を受けられる受給権者とされています。

婚姻届を出していない内縁の妻であっても「妻」として遺族補償給付を受け取れるのでしょうか?

 

結論として、労災保険の支給対象としての「妻」には「事実婚の妻」も含まれると考えられています。

労災保険の目的は、労働者によって生活を支えられていた人の生活補償だからです。

事実婚の妻であっても夫によって生計を維持されていた以上、労災保険を支給すべきといえるでしょう。そこで事実婚のケースでも、妻であれば遺族補償給付を受け取れます。

さらに扶養されていなかった場合の「遺族補償一時金」も、事実婚の妻へ支給されます。

 

内縁の妻であっても遺族補償給付を受けられますので、夫が労災で死亡したら労働基準監督署へ労災保険の申請をしましょう。

 

4.戸籍上の妻がいる場合の遺族補償給付

内縁のご夫婦の場合、夫に「戸籍上の妻」がいるケースが少なくありません。戸籍上の妻と離婚しないまま、重婚的に内縁の妻と夫婦関係を構築しているパターンです。

このように、戸籍上の妻と事実婚の妻の両方がいる場合、どちらが遺族補償給付を受けられるのでしょうか?

 

この点については、裁判例があるのでご紹介します。

 

戸籍上の妻と事実婚の妻の両方がいる男性が労災事故で死亡したケースにおける遺族補償給付金について、裁判所は、以下のように判断しました(東京地裁平成10527日)。

  • 労災保険の「配偶者」とは、基本的に婚姻の届出をした配偶者を意味する
  • 婚姻関係の実態が失われ形骸化しており、近い将来においてもその状態が解消される見込みのない場合には内縁の配偶者を「配偶者」とする

 

つまり、戸籍上の妻と事実婚の妻がいる場合、基本的には「戸籍上の妻が優先」して遺族補償給付を受けられます。

ただし戸籍上の妻との関係が形骸化し、事実上の離婚状態にある場合には事実上の妻に遺族補償給付の受給権が認められます。

事実上の妻が遺族給付年金や一時金を請求する際には、亡き夫と戸籍上の妻との関係が重要なファクターとなるといえるでしょう。

 

なお「事実上の離婚状態」というために戸籍上の妻との間に「離婚の合意」が必要かどうかについては、裁判例でも見解が分かれています。離婚の合意がなくても婚姻関係が形骸化しているだけで「事実上の離婚状態」とみなすものもあれば、「事実上の離婚というためには離婚の合意が必要」と判断するものもあります。

 

 

5.労災保険の申請方法

夫が死亡して労災保険から遺族補償年金や一時金を受け取りたい場合には、労基署へ労災保険(遺族補償給付)の申請をしなければなりません。

そのためには、労災事故に関する資料や内縁関係であることを示す証拠、戸籍上の妻との関係が形骸化していたことがわかる証拠など、いろいろな資料を集める必要があります。

戸籍上の妻がいる場合、「どちらが受給すべきか」という問題が発生してトラブルになる可能性もあるでしょう。

 

自分ではどうしたら良いのかわからないとき、頼りになるのは弁護士です。夫を労災事故で失った内縁の妻の権利を守るには、法的観点からの支援が必要となるでしょう。お困りの際には、お早めにご相談ください。

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