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別居中の夫婦間の子の引渡しをめぐる事件・審判前の保全処分

 
 別居中の夫婦間の子の引渡しをめぐる事件は、家庭裁判所においては、民法766条2項の「子の監護に関する処分」や審判前の保全処分として申し立てることになります。

子の監護者を指定する基準

 子の監護者を指定する基準は、子の最善の利益の確保であり、従前から、父母のいずれが監護者として適格かにつき諸事情を総合的に比較衡量して決定するものとされてきています。

 裁判例では、比較衡量の事情はあるように思いますが、現在でもベースラインには母性原理に基づく母性優先の原則があるように思いますので、裸の利益衡量が行われているわけではありません。
 具体的には、こどもが年少の場合は、監護能力、精神的家庭環境、居住教育環境、従来の監護状況、実家の資産、親族の援助の可能性等で大枠のフレームが作られ、調整的要素として、従来の環境への適応状況、環境変化への適応性が考慮されることになります。

 次に、こどもが10歳以上等の場合は、基本的には、子の意向、年齢、性別、父母及び親族との結びつき等で大枠のフレームワークが決められ,監護能力、精神的家庭環境、居住・教育環境などは、調整的要素になるものと考えられます。したがって、従来の環境への適応状況、環境の変化への適応性等があげられており、こうしたものが「子の意向」に投影され、考慮されるところがあります。したがって、主観的要素も重視されることから,必ずしも客観的事情の対比ではなく、心理学に精通している弁護士に依頼する必要性があるものと考えられます。

父親が審判前の保全処分などを受けている場合

 現在の母子優先の原則からしても、調停中に母親が子連れ別居したり、父親が子連れ別居したり、さらには子連れ別居後の連れ戻しが問題となります。多くは、父親が母の下で平穏に監護されている未成年者を、調停係属中に父が連れて帰ったというものです。文献などには「違法」という用語が使用されますが、こどもの最善の利益からすると母方実家に帰ることだけが子の最善の利益に適合するとはいえず、母親が平穏な監護状態を形成していない段階での奪い合いは、私見は違法性の程度は低いのではないかと考えます。

 いずれにしても審判前の保全処分は、父親がこどもの監護を開始した場合に多くが問題となります。

仙台高裁秋田支部判決平成17年6月2日家月58巻4号71ページ

 別居中の夫婦のうち一方の配偶者である母が、公然かつ平穏に子らをその監護下に置き、監護を継続していたにもかかわらず、他方配偶者である父がこらを連れ戻した事案。

 この場合も結局は、自力救済でこどもを連れ出しているのは、母も父も同じで、常識的にやっていることは、有形力を行使しない限り、許容されると世間では思われますが、現実には、母親の連れ出しは適法、父親による取り返しは違法という枠組みの中で、父親は裁判所と向かい会う必要が生じます。特に原状の変更が生じている場合、なかなか裁判所は緊急性も「高め」として、審判前の保全処分の発令を急ぐ印象があります。

 仙台高裁秋田支部は、子の監護者・引渡しは、平成7年の裁判官会議決定を意識していますが、平成7年裁判官会議決定では、引渡しを求める側が監護者よりもある程度有意に上回る必要があるとされていました。そこで、これにペナルティを課したうえで、「子の福祉の観点から、相手方父親に引き続き子らを監護させる場合に得られる利益と母親抗告人に子らを監護させる場合に得られる利益を比較衡量し、父方が母方をある程度有意に上回ることが積極的に認められない限り、母親抗告人による引渡請求を認容すべき」としました。これは、妥当な考え方のように思われ、他でも参照されるべきもののように思います。つまり、審判前の保全処分で子の引渡しを求めるには、自分の方がある程度有意に上回っていることの主張立証が必要になるはずですが、自力救済による連れ出しであることから、こうした議論を避けて現状を追認することは相当ではないようにも思われるからです。

 もっとも、母親による子連れ別居が当然のように適法しされる中で、父方は、自力救済が許されず非難されるのも、平等原理からすると違和感を抱くことがあり、いずれとも違法として、審判前の保全処分の対象とするのが、ハーグ条約批准後の我が国では公平なように考えらえます。もっとも、相手方父親に引き続き監護させる利益と申立人母親に監護させる利益との間には、有意な差異は認められないから,子らの引渡請求を認容すべき、としました。違法状態といわれても、いったい何法に違反しているかもよく分からない理論的状況でラべリングをされるのはどうか、とも考えられます。特に日本では共同親権であるのに、母の監護権を侵害した違法状態というのも意味がよく分からないのが現状であるといえます。

 父方は、子の監護者指定、引渡しでは「母性優先の原則」の前に以下のペナルティが課されます。

具体的には重い立証責任を課して、事実上父親の言い分は疎明はないとして排斥されてしまうこと、次に本案で連れ出しをした親を不利に扱う立場、連れ去りを資質として考慮しない立場があります。

審問も公平ではない

 最近、三重県津地方裁判所四日市支部の裁判所の審判前の保全処分の審問が、「公平」といわれたことがありました。離婚関係の審問ですが、不公平に運用されていると感じるということなのでしょう。

 すなわち、ゴールドスティンらが述べる「主たる養育者」の要素について同じ質問を父母に行い、さらに発言を求めた父の話しも聴いてくれました。
 この方は、名古屋でも同じ手続をしていたものですから、四日市支部の女性裁判官の「公平さ」に感心して「本当に名古屋でやったものと同じ手続なのですか」と聴いてくるほどでした。

 家裁では、一方的に聴きたいことを聴くという印象で、証人尋問の方が、公開法廷が保障されている以上、無理なこともいえないですし、家裁事件ほど弁護士の関与が必要になると思います。
審問の前に見立てが決められており、あとはその見立てに沿った情報を収集する場と位置付けており、この点がそれぞれ多くの問題点を抱いているといえるでしょう。

 四日市の女性裁判官は、同じ質問を当事者に行うという点がとても公平のように思いました。そしてその後に個別の質問を重ねていきました。

 一例を挙げると、女性に対して、離婚前の面会交流が良好であったことをとりあげ、殊更そのことしかきかず、聞き終わったら審問を打ち切りましたが、ある方が「馬鹿が権力を持つと大変」と評したことが思い出されます。特に調査官調査で居住場所が違っており、住居でないところを調査した例なども散見されます。すなわち、騙されていることに気付かないということすらありました。当事者は当該裁判官に強い不信感を持ちましたが、ある程度住所を秘匿している場合は抜き打ち的調査も必要なように考えられます。このケースでは、調査日付が調査を受ける側に明らかにされているため、兄弟の家に住んでいると虚偽の情報を裁判所に伝え、調査報告書には「監護補助者もいて問題が全くない」などと書かされていましたが事実に反しており、まさに「馬鹿が権力を持つと大変」の典型例といえるでしょう。しかし、このように「仕立て上げられ」調査官が騙されると、調査官も騙されたとは評価されたくないことから必死に調査の正当性を主張するので、手続的アプローチにおいて、少しの配慮でも納得度はここまで変わるのだな、と思いました。

 都市部では事案の大量処理のため、母子優先主義者の裁判官の場合、監護親の男性は相当の労力を使います。しかし、母子原理が出生後1カ月しか有意でないことに照らすと、公平な見地からの指定が必要であり、他方離婚訴訟までの「つなぎ」審判としての特性を考慮した規範が求められるように思われます。

【裁判例】
(2) 判断
ア 別居中の夫婦のうちの一方配偶者甲が公然かつ平穏に子をその監護下に置き,監護を継続していたにもかかわらず,他方配偶者乙が子を無断で連れ去るなど,違法に子をその監護下に置いたため,甲が家庭裁判所に子の引渡しを申し立てた場合には,子の福祉の観点から,乙に引き続き子を監護させる場合に得られる利益と甲に子を監護させる場合に得られる利益を比較し,前者が後者をある程度有意に上回ることが積極的に認められない限り甲による子の引渡請求を認容すべきものと解される。
 なぜなら,乙が,違法な連れ去りによらず,正当に家庭裁判所に子の引渡しを申し立てていれば,乙の監護によって得られる利益の方がある程度有意に甲の監護によって得られる利益を上回ることを明らかにしない限り,その申立ては認められないはずであるにもかかわらず,違法に子を連れ去ったことによって,甲がその監護によって得られる利益の方がある程度有意に乙の監護によって得られる利益を上回ることを明らかにしなければならなくなってしまうとすれば,乙が法的な手続を選択するよりも自力救済を選択することによってかえって有利な地位を獲得することを許すことになり,違法行為を助長する結果を招き,家庭裁判所の審判によって子の奪い合いを抑え,平穏に子の監護に関する紛争を解決することが困難となるからである。また,違法に子を連れ去る行為は,法律や社会規範を無視することをいとわない行動を採ったことを意味するものであり,そもそも監護者としての適格性を疑わせる事情という側面があることも否定し難い。
イ 以上の判断枠組みに即して,本件についてみると次のとおりである。
(ア) 抗告人母親は,別居を開始する際,Cら未成年者3名を実家に連れて行ったが,前記(1)ア認定のとおり,相手方父親は,その状態を前提に抗告人に拒絶されることなく,一定の面接交渉を行うなどし,その間,Cら未成年者3名を引き渡すよう求めたりしたことはなかったのであるから,抗告人によるCら未成年者3名の監護は公然かつ平穏に開始,継続されていたと認めることができる。
 この点,相手方は抗告人が無断でCら未成年者3名を連れ去ったことがそもそも問題とされるべき旨主張するが,相手方のその後の行動は抗告人によるCら未成年者3名の監護を前提にしたものということができるから,相手方の主張は採用できない。
(イ) 相手方は,抗告人に無断でCら未成年者3名を保育園から連れ去ったのであり,違法にCら未成年者3名をその監護下に置いたというべきである。
この点,相手方はその連れ去りに暴力的あるいは威かく的なところはなかったと主張する。しかし,そのような態様を伴う違法性の高い連れ去りが許されないことはいうまでもない(この場合は,前記のような利益の比較以前の問題として,当然に引渡請求が認容されるべきである。)が,公然かつ平穏に子を監護下に置く親権者から無断で他方の親権者が子を連れ去る行為自体が違法であって許されないことは疑いがなく,前記の判断枠組みに照らし,連れ去りの態様を自己に有利に採り上げようとする相手方の主張は失当である。
なお,抗告人は,相手方による違法な連れ去りを追認することになるという考慮もあり,平成17年1月12日に本件審判を申し立てるまでCら未成年者3名との面接交渉を控えてきたのであるから,相手方がCら未成年者3名を抗告人に無断で連れ去ったことによる違法性がその後の抗告人の行動によって減少ないし消滅したという事情は認められない。
(ウ) 上記(ア),(イ)の事情の存在を前提とすると,本件においては,相手方の監護によって得られる利益の方がある程度有意に抗告人の監護によって得られる利益を上回っていることが積極的に認められる場合に限って抗告人の申立てを却下すべきことになるが,前記引用に係る原審判の認定(3)(前記(1)エにおいて付加された部分を含む。),(4)から明らかなとおり,前者の利益と後者の利益との間に有意な差異は認められない。したがって,抗告人の相手方に対するCら未成年者3名の引渡請求を認容すべきである。
 この点,相手方は,抗告人がCら未成年者3名の世話をせず,同児らに中耳炎や虫歯,右手指の負傷を生じさせた状況の中で,連れ去りの前日に相手方と面接交渉をしたCが抗告人宅に戻ることを強く拒絶したため,やむにやまれずCら未成年者3名を連れ去ったと主張する。
 しかし,抗告人は,Cら未成年者3名の世話をしなかったとの点を明確に否定し,中耳炎については病院で受診させたし,虫歯については発熱による服薬の影響を考慮して受診を控え,症状が落ち着いてから受診させようと考えていたと反論しているのであって,これらの点について相手方の主張を認め抗告人の主張を排斥するに足りる的確な証拠はないこと,右手指の負傷については抗告人の父母の不注意によるものではあるが,そのような偶発的な事故のみをもって抗告人の監護者としての適格性に疑義を生じさせるものとはいえないこと,Cが相手方の主張するような言動をとったとしても,前記(1)エ認定のとおり,その後同児において抗告人らと良好な関係を維持している状況が存するのも事実であることを考慮すると,相手方の監護によって得られる利益の方が有意に抗告人の監護によって得られる利益を上回るとの趣旨を述べる相手方の上記主張は採用できない。
(エ) なお,相手方は,Cら未成年者3名の親権者の帰すうをめぐっての本案訴訟が既に青森家庭裁判所弘前支部に係属しており,さほど遠くない将来,その判断がされることが予測される状況下においては,本件審判と本案訴訟の結論が食い違った場合,引渡しが繰り返されてCら未成年者3名に不利益が生じると主張する。
 しかし,そのような事情は結局,相手方に引き続き子を監護させるべきであるとの前提に立つ場合に得られる利益の一内容にすぎないところ,少なくとも現状において,そのような前提を採り得ないことは,既に説示したとおりである(なお,本件において実施された家庭裁判所調査官の調査結果は,抗告人,相手方いずれの監護養育環境にも優劣を付け難く本件審判においてCら未成年者3名の現状を変更する必要がないとの意見が付されるにとどまり,本案訴訟においていずれの当事者が親権者としてふさわしいかについては全く言及していないのであるから,上記調査結果は,それだけでは直ちに本案訴訟における相手方に有利な判断を導くべき証拠になるものではない。
また,本案訴訟が第1審に係属し,近い将来判決が出されるとしても,手続上それが速やかに確定するとは限らず,更に控訴,上告がされることもあり得るのであり,この点でも,相手方の主張は,前提に誤りを含むものというべきである。
さらに,前記認定のとおり,Cら未成年者3名が相手方とも抗告人らともそれぞれ良好な関係を維持していること,上記の家庭裁判所調査官による調査及び抗告人提出に係るビデオテープから,Cら未成年者3名の環境適応能力の高さがうかがわれること,抗告人の申立てを認容しても平成17年4月から△△小学校に入学したCが転校する必要はなく,他の未成年者2名も○○保育園への通園を継続し得ることなどに照らすと,もともとCら未成年者3名の監護養育環境の変化について,通常以上に慎重を期すべき特段の事情があるとはいえない。
以上の各点からして,相手方の上記主張もまた失当であって,抗告人の引渡請求を認容すべきとの前記結論を左右するものではない。
3 以上のとおり,本件抗告は理由があるから,原審判を取り消して抗告人の申立てを認容することとし(なお,抗告人は,抗告の趣旨において,事件の原審への差戻しを求めているが,抗告人が差戻審において求める審判が主文第2項と同旨となることは明白であるから,当裁判所が家事審判規則19条2項の要件を満たす本件について審判に代わる裁判をしたとしても,抗告人の意思に反するものではないし,相手方に対する不意打ちになるものでもないと解される。),主文のとおり決定する。

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