離婚弁護士への相談を
ためらう理由はありません

HOME > 離婚に関するニュースなど > 離婚慰謝料を求めた前訴があるときに婚姻期間中の個別慰謝料は認められるか。

XとYとは元夫婦である。Yは婚姻後,不貞相手の子Zを出産したが,Xはこれを知らされないままZを自己の実子として養育し,20年近く経ってからZが実子ではないことを知った。XはYに対し離婚訴訟及びこれに伴う離婚慰謝料の損害賠償請求訴訟を提起し(前訴),前訴では,XのYに対する慰謝料3700万円及び経済的損害1800万円の請求のうち,慰謝料600万円のみが認められた。
 本件は,前訴確定後,Xが,Yに対し,①嫡出子として養育してきたZが不貞相手の子であったこと自体について,不法行為に基づく慰謝料1500万円の賠償及び②20年間にわたってXがYに交付したZの養育費1800万円の不当利得返還を求めた事案である。原判決は,①については前訴と訴訟物が同一であるとして,②については権利の濫用に当たるとして,いずれの請求も棄却した。これを不服として,Xが控訴したのが本件である(なお,控訴審において,②の予備的請求として,Zが不貞相手の子であることを隠して養育費を支出させたことが詐欺に当たるとして,③不法行為に基づく養育費1800万円の損害賠償請求も追加された。)。

伊藤勇人弁護士とシュシュとのパースペクティブ
シュシュ:パパさんとしては、こどもが自分と血縁上の関係になかったことにとても怒っているみたいだね。ただ、日本的な気持ちは分かるけど、フランスでは身分占有制度があるからこういう訴えも認められない。少しエモーショナルすぎるのではないかな。
弁護士 :日本の法社会学や法解釈からいくと、むしろ血縁主義に傾きつつあるトレンドの中で、理解ができるという訴えという見方もできるかもしれません。
シュシュ:叔父さんは、僕と血縁関係がないという理由で、詐欺でお金返せって訴訟起こす?
弁護士 :いや、僕は、リベラルなので、自分とシュシュとの関係がしっかりしていたら多分起こさないね。こどもとの関係がこの訴訟で決定的になってしまうからね。
シュシュ:そういう意味でこの女性は悪女で離婚して、こどもとの関係についても断絶させたのではないかな。でなければ育ての父親としてそこまで怒る理由が分からないよね。
弁護士 :本判決は,①については,本訴で不法行為を基礎付ける事実として主張されているのは,前訴の慰謝料請求のそれと同じであるから,本訴は,前訴と実質的に紛争の実体が同一であり,司法判断を経て決着した紛争をあえて蒸し返すものとして,信義則に反して許されないとして,訴えを却下し,②については,以下の理由で請求を棄却する判断をして,原判決を変更した、③についても,信義則に反するとの理由で訴えを却下しました。
シュシュ:これに対して、(1) Xは,婚姻費用の一部として,婚姻期間継続中に嫡出推定を受けるZについての養育費を支払っていたのであるから,養育費は,法律上の原因に基づいて支払われていたものである。(2)養育費はZの養育に投じられたものだからY自身は利得していない。(3)不当利得の法理は,一方が利得し他方がその結果損失を被っている状態を放置しておくことを正当としない違法状態を是正しようとするものであるところ,Xは,約20年間Zと良好な親子関係を形成し,Zを1人の人間として育て上げたのであり,その過程では自らの経済的負担のいわば対価として,Zから金銭には代えられない無上の喜びや感動を与えられたものであるから,養育費を投じた結果に,不当利得の法理により是正しなければならない違法な不均衡状態があると解することはできない、と反論したんだね。でもあんたにいわれたくないという気持ちは理解できるよ。これはだって、僕と叔父さん、こどもとパパの問題だよね。ママの反論としてこどもの主張の全面的な援用は認めてほしくないなあ。
弁護士 :とはいうものの、実は離婚訴訟で慰謝料を支払っているんだよね。だから、それで慰藉されているのではないか、ということなんです。
シュシュ:要するに、同じ訴えか否かだけど、精神的な苦痛と逸失利益は分けられてもよさそうだよね。
弁護士 :うん。地方裁判所の発想からいくとそんな感じかな。
シュシュ:判決文を紹介するね。まず、本判決は,この争点につき,まず,上記2(1)(2)のとおりの理論的な理由を挙げて,不当利得の成立を否定しているよ。この点,XとZとの間では,「養育費の支出後,親子関係不存在確認の審判が確定しているが,嫡出否認の訴えの出訴期間経過後に親子関係不存在確認の訴えをもって父子関係の存否を争うことは原則として不適法と解されているところ,上記審判は,身分関係の存否の確定に関する当事者間の合意が成立し,当該合意に相当する審判(家事審判法23条2項,1項)としてされたもののようであり,当事者の合意の趣旨をも考慮すれば,本判決は,このような当事者間の合意に基づく審判によって養育費の支出当時に存した法律上の原因が失われるものではない」と解したのではないかって感じです。
弁護士 :シュシュが混乱する権利濫用判決との整合性も一応とれそうだよ。あの判決は将来分に関わるものだし、最小判平23.3.18判タ1347号95頁も,夫との間に自然的血縁関係はないが法律上の親子関係はある子(本件と同様に妻の不貞相手の子)の将来の養育費の支払義務が争われた事案につき,自然的血縁関係がない場合であっても,嫡出子とされる子に対しては夫が扶養義務を負い,離婚後も養育費の支払義務を負うのが原則であることを前提としているよ。ただし,諸事情に鑑み,元妻がその負担を求めることは権利の濫用に当たるとの判断をしているね。
シュシュ:英米法では、医師の施行した避妊手術の過誤により子(健常児)が生まれた場合に,親が医師に対してその養育費を損害として請求することができるかという論点につき,イギリスの貴族院判例では,本判決と同様に,親が子を養育することにより得られる喜び等の計算不可能な「利益」が考慮されて医師の養育費の損害賠償責任が否定されているんだよ。(McFarlane v Tayside Health Board[2000]2AC 59)。叔父さんももっと喜び等計算不可能な時間を僕と過ごそうよ。
弁護士 :・・・。さて、続いて、争点2は民事訴訟法に関係して訴訟物をどう考えるかにもかかわる問題で、普通は遮断されないだろうとも思われる事案です。一般に,後訴が前訴の実質的な蒸し返しに当たる場合には,信義則違反として訴えが却下される旨の多数の判例・裁判例があるが,これを離婚慰謝料の請求に関して適用したものは見当たらないんです。先ほどいったように、精神的苦痛と逸失利益は別でしょう、という理屈からは認められても良かったようにも思えるのです。
シュシュ:離婚慰謝料って訴訟物の中身が詳しく分からないブラックボックスのようなものだよね。でも、離婚慰謝料の射程距離がとても広いんだという、信義則違反に当たるとされる場合なんだね。

東京高判平成21年12月21日東京高判判時2100号43頁
二 慰謝料請求について
 (1) 控訴人は、前訴控訴審判決は、離婚そのものによる慰謝料の請求を認容したものであるのに対し、本訴の慰謝料請求は、離婚原因たる個別の有責行為による慰謝料の支払を求めるものであり、訴訟物が異なると主張して、上記判決において認容された慰謝料六〇〇万円とは別途、慰謝料一五〇〇万円の支払を求めている。
 ところで、離婚に伴う慰謝料請求は、相手方の一連の有責行為により離婚を余儀なくされたことの全体を一個の不法行為として、それから生じる精神的苦痛に対する損害賠償請求と扱われるのが通常であるが、その場合、その間の個別の有責行為が独立して不法行為を構成することがあるかについては、当該有責行為が性質上独立して取り上げるのを相当とするほど重大なものであるか、離婚慰謝料の支払を認める前訴によって当該有責行為が評価し尽くされているかどうかによって決するのが相当である。
 これを本件についてみると、前記認定事実のとおり、前訴は、控訴人が離婚の主たる原因は被控訴人の度重なる不貞行為にあり、その結果、被控訴人が他人の子である一郎を懐胎、出産した上、その後二〇年以上にわたり一郎が他人の子であることを控訴人に隠し続け、控訴人をして一郎を養育監護させ、これによって精神的苦痛を被ったと主張して、被控訴人に対して三七〇〇万円の慰謝料請求をし、前訴控訴審判決は、控訴人主張の上記事実を認定した上、控訴人が受けた精神的苦痛に対する慰謝料として六〇〇万円を認容し、その余を棄却したという内容のものである。そして、本訴において、控訴人が不法行為を基礎づける事実として主張するのは、前訴控訴審判決の上記事実と同じ事実である。
 そうすると、前訴控訴審判決は、本訴の不法行為を基礎づける事実と同様の事実を評価して、三七〇〇万円の慰謝料請求のうち六〇〇万円を超える部分の慰謝料請求を排斥したものであるから、本訴の提起は、前訴において主張されて評価が尽くされた事実に基づいて慰謝料の支払を再度求めているものにほかならない。他方、被控訴人において、前訴控訴審判決によって、同等の事実に基づき上記金額を超える賠償請求をもはや求められることはなく紛争が決着しもはや訴訟その他の紛争を引き起こされることはないものと信頼したものと認めるのが相当であり、その信頼は法制度上正当なものとして保護されるべきものであるから、控訴人が本訴を提起することは上記信頼関係を侵害するものであり、適正・衡平を著しく欠いた行為であるというべきである。以上の諸点からすると、本訴は前訴と実質的には紛争の実体は同一であり、単に既判力に抵触するというにとどまらず、前記認定のとおり、十分な審理を尽くした上で司法判断を経て決着した紛争をあえて蒸し返すものであるといわざるを得ないから、信義則に反して許されないものと解するのが相当である。
 (2) 以上の次第であるから、控訴人の被控訴人に対する慰謝料請求に係る部分の訴えは不適法というべきである。
 三 不当利得返還請求について
 (1) 控訴人は、前訴控訴審判決の確定後、控訴人と一郎との間に親子関係が存在しないことを確認する旨の審判を受けたことを踏まえ、控訴人が一郎出生時から同人が二〇歳になるまでの間に控訴人に対して交付した同人の養育費相当額一八〇〇万円は本来であれば負担する必要がなかったものであるとして、法律上の原因のない支出を強いられたものであり、反面、被控訴人において同額の不当な利得をしている旨主張する。
 しかし、控訴人が一郎のためにのみいつの時点で一八〇〇万円に達する養育費を負担したのかについて主張立証はなく、不当利得返還請求権における控訴人の損失額及び被控訴人の利得額の双方についてこれを具体的に確定することはできないのであるから、まずこの点から上記請求には問題がある。
 もっとも、控訴人が相当額の上記養育費を支出したことは事実であり、これをすべて否定することはできないのであるが、そうであるとしても、かかる養育費相当額を目的とする不当利得返還請求は法規範の要請と相容れないというべきものであり、かかる請求を容認することはできない。すなわち、まず、控訴人が一郎の養育費を支払ったのは被控訴人との婚姻関係の継続中のことであるところ、法律上控訴人は、妻である被控訴人と嫡出子の推定を受ける一郎に対し婚姻費用を負担し(民法七六〇条)、上記養育費用もその一部として支払われていたのであるから、これは被控訴人及び一郎のいずれとの関係でも法律上の原因に基づいて支払われていたものであり、ここに不当利得の観念を入れる余地はなく、上記養育費相当額について不当利得にかかわる損失ないし利得を観念することができない。
 また、控訴人の主張に照らしても、上記費用は専ら一郎の養育に投じられたものというべきであり、したがって被控訴人がその利得を得たものでないことは明らかであるから、この点からも被控訴人に控訴人が支払った養育費相当損害に対応する利得を得ていることを観念することはできない。
 そして、何よりも、不当利得の法理は、公平の理念に基づき、法律上の原因なく生じた利得者と損失者間の均衡を図ろうというものであるが、それは一方が利得し他方がその結果損失を被っている状態を放置しておくことを正当としない状態、すなわち全法秩序が是認しない違法状態とみてこれを是正しようとするものと解される。このような不当利得における違法状態があるかを本件についてみる。取調済みの全証拠及び弁論の全趣旨によれば、控訴人と一郎の関係は、少なくとも同人が実子ではないことが発覚するほぼ成人に達する年齢までは父と息子として良好な親子関係が形成されてきており、その間控訴人は、実子という点を措いてみても、一郎を一人の人間として育て上げたのであり、その過程では経済的費用の負担やその他親としての様々な悩みや苦労を抱えながらも、これらのいわば対価として、一郎が誕生し乳幼児期、児童期、少年から大人ヘの入り口へと育っていく過程に子を愛しみ監護し養育する者として関わりながら、その成長の日々に金銭には代えられない無上の喜びや感動を一郎から与えられたことは否定できるものではあるまい。また、養育を受けたことにつき一郎には何らの責任はない。このように見てみると、控訴人が一郎に養育費を投じた結果に是正をしなければ法規範の許容しない違法な不均衡状態があるなどと解することはできない。
 むろん、自らの不貞行為によりもうけた他人の子をそうとは知らせないままいわば騙して控訴人にわが子として育てさせた被控訴人の責任は軽くはないが、これにより控訴人に与えた精神的、財産的損害の回復を図る民事法上の法理としては不法行為法理が用意されているのであり、これにより責任を取らせるべきものである。そして、上記不法行為責任については、既に前訴控訴審判決により解決済みであり、控訴人がその内容に不満を残しているとしても、法制度上はこれを蒸し返すことは許されない。
 以上、いずれの観点から検討してみても、控訴人の被控訴人に対する養育費相当額の不当利得返還請求は理由がないというべきである。
 (2) 控訴人は、上記不当利得返還請求が容認されない場合として、予備的追加的に不法行為に基づき同額の経済的損害の賠償を求めるが、これは既に前訴控訴審において審理判断されており、明らかな蒸し返し訴訟となり、前記慰謝料請求の訴えについて述べたとおり、不適法な訴えというべきである。




相談票を印刷し、ご記入いただいた上でお越しいただくと、ご相談がスムーズに進みます。

■無料相談はお気軽に
(月〜土、9時〜18時,日曜新規のみ13時~17時、土日祝日打合OK【対応は愛知、岐阜、三重のみとさせていただいております。当事務所では、それ以外の方のご依頼は、交通費や弁護士費用などについてご納得いただける方のみご依頼をお受けしております。他県の方は電話相談となりますが、30分5400円となります。】)名古屋市中区丸の内1-14-24ライオンズビル第2丸の内204、桜橋東交差点付近 TEL.052-756-3955

〒450-0002
名古屋市中村区名駅5丁目6-18
伊原ビル4F




名古屋の不動産・労務・知的財産に強い顧問弁護士・中小企業の法律サポーター


名古屋の地域一番の相続屋さんを目指す遺産分割サポーター


新規起業を応援する弁護士・ドリームゲートアドバイザー 伊藤 勇人(ドリームゲート)

家族問題の法律サポーター

不倫慰謝料法律相談所

B型肝炎被害訴訟の給付金・医療過誤相談所

ハッピーリタイヤサポーター

LGBT トラブル解決サポーター

親子の面会交流相談所